全印度國民會議委員會は、來る九月三十日を以て、外國製布非買同盟を徹底的に決行するといふ重大な決議をした。この非買同盟はロカマンヤ・チラクを記念するために、去る七月三十一日にボンベイで點ぜられた犧牲的な火と共に始まつたのである。私はあなた方が今まで立派な美しいものと考へてゐた高價なサデイやその他の衣服の山に火をつける特權をあなた方から與へられたのである。私は※[#「姉」の正字、「女+□のつくり」、225-7]妹たちがその高價な衣類を投出されたのは正しく賢明であつたと思ふ。あの衣類を燒棄てたことは、あなた方がそれを利用し得た最も經濟的な运用法であつた。何となれば傳染病細菌の附着した品物を燒棄てることは、それを最も經濟的に、最もよく用ゐることだからである。それは國家のより重大な疫病を豫防するために必要な外科手術である。
印度の婦人は、過去一年間に母國のために驚くべき仕事をした。あなた方は慈悲の天使として無言で働いた。現金や立派な寳石類を手放した。寄附金を集めに戸別訪問をした。あなた方の中には、見張りの應援をした方さへあつた。又これまで美しい模樣の着物を※[#「纏」の「广」に代えて「厂」、226-3]ひ、日に幾度も着代へをしたあなた方の中のある方々は、今では婦人固有の純潔を思はせるやうに純白な、しかし重い國産綿服を用ゐてゐる。あなた方はすべてこれ等のことを、印度のために、キラフアツトのためにパンジヤツブのためにしたのである。あなた方のしたことには、一點の非難すべきところもない。あなた方の行動は、怒りや憎しみで穢されない、最も純潔な犧牲である。全印度に及ぶあなた方のこの自然な、美はしい感情の發露は、神は吾々と共にあることを私に確く信ぜしめたといふことを、あなた方の前に告白したい。無數の印度婦人が進んで援助してゐるといふ事實は吾々の爭鬪が一つの自己淨化であることの何よりの證據である。
今までもあなた方の多大の助力を得たが、今度は尚一層助力を得なければならぬ。男子の諸君はチラク
又自治の計畫を成就するには、カデイの运用が必要であるばかりではなく、あなた方が一人殘らず暇な時に絲を紡ぐことが絶對的に必要である。私は子供たちや男子にも紡ぐやうに勸めた。實際數千人の者が毎日紡いでゐるのだ。手紡ぎの重な負擔は、昔のやうにあなた方が負はねばならぬ。二百年前には、印度の婦人は、國内の需要に應ずるために紡いだばかりではなく、外國の需要にも應じたのである。彼等は粗末な品ばかりではなく、世界で嘗つて見なかつたやうな最も立派な品を紡いだのである。いかなる機械を用ゐても吾々の祖先が昔紡いだ絲のやうに綺麗な絲は出來なかつたのだ。そこで、若し吾々が二ヶ月間とその以後に於てもカデイの需用に應じようとするならば、あなた方は紡績倶樂部を作り、紡績共進會を開いて、手紡ぎの絲で印度の市場を一ぱいにしなければならぬ。この目的を達するためには、あなた方のうちの或る方は、絲の紡ぎ方、梳き方、紡車の使ひ方に熟達しなければならぬ。これは斷間のない勞働である。あなた方は絲紡ぎを生活の手段とは考へないであらう。然し、中流階級にとつては、それは家族の收入の補ひとなり、極く貧しい婦人にとつては、それは疑ひもなく生活の手段となるのである。紡車は、嘗つてそれが寡婦の好伴侶であつたやうにならなければならぬ。けれども、この文章を讀まれるあなた方にとつては、それは義務として、ダールマ(信仰)として置かれるのだ。若し富める印度の婦人たちが毎日幾らかづつ絲紡ぎをするならば、絲の値は安くなり、必要な精巧品も速かに供給されるやうになるだらう。
かやうに印度の經濟上及び精神上の救ひは、主としてあなた方の双肩にかかつてゐるのである。[#「ゐるのである。」は底本では「ゐるのである」]印度の將來はあなた方の膝の上に横はつてゐる。何となれば、あなた方は未來の國民を養育される方だからである。あなた方は印度の子供を純朴で、神を怖るる、勇敢な男女に育て上げることも出來るし、又彼等を甘やかして、人生の荒波を乘切ることの出來ない、外國の美服を※[#「纏」の「广」に代えて「厂」、229-11]うて、後になつて、それを廢さうと思つてもなし得ない軟弱な人間にすることも出來るのである。印度の婦人がいかなる能力を有するか、今後數週間で分るだらう。私はあなた方がいかなる選擇をするかに就ては、少しも疑はない。印度の運命は、印度をして自暴自棄に陷らせたほどにこの富源を搾取した政府の手の中にあるよりも、あなた方の手の中にある方が遙かに安全である。
私はあらゆる婦人の會合に於て、あなた方がこの國民的努力を祝愿して下さるやうにお願ひした。それは、あなた方の純潔と、眞摯と、敬虔とは、きつと効果のあるやうな祝愿を與へて下さるだらうと信じたからである。あなた方は外國製衣類を棄て、暇な時間には休みなく國家のために絲紡ぎをさるることにより、あなた方の祝愿が豐かな實を結ぶことを、確實に信じていいのである。
あなた方の忠實な兄弟エム・ケイ・ガンヂー
(一九二一年八月十一日「ヤング・インデイア」紙所載。)