「You=あなた」と理解している日本語学習者はとても多いというよりはほとんどである。実際「あなた」を「You」と訳している教科書が大部分であり、また英語ではこの「You」は第二人称として頻繁に使われるので生徒さんのそんな理解も大いにうなづける。
很多日语学习者都认为“You=あなた”。实际上也有许多教科书把“あなた”翻译成“You”,另外因为在英语中“You”作为第二人称被频繁的使用,所以对学生的这种理解我也认可了。
しかし「先生、あなたの趣味はなんですか」などといわれると一言注意したくなってしまう。
但是当我被学生问到“先生、あなたの趣味はなんですか”(老师,你的兴趣是什么)时,我忍不住要提醒她一下了。
ある上級レベルのクラスを受け持った最初の授業のとき、ある生徒さんが「あなたのご住所はどちらですか」と質問してきた。すでに敬語も勉強している上級クラスなので、「その言い方はとても失礼ですよ」とかなり強く注意したのである。彼女は「ご住所」「どちら」などちゃんと敬語を使っているのに怒られたのが信じられず、「どうして失礼なんですか」と食い下がって来た。「あなた」がだめですと説明したのだが・・・
我接手了一个高级水平的班级,上第一堂课的时候,某个学生问我“あなたのご住所はどちらですか”(你的住所在哪里)。因为已经学过了敬语的高级班,我严厉地提醒她,“这种说法很不礼貌哦”。但学生觉得自己恭敬地使用了「ご住所」「どちら」等敬语,还被斥责,觉得不可置信,于是追问道“为什么不礼貌呢”。我向她说明,对老师不能用“あなた”。
確かに英語を母語としている生徒さんは戸惑ってしまうであろうが、我々日本人は「あなた」という言葉を上司やお客には決して使わない。どちらかというと同等以下の人に使っている。
确实以英语为母语的学生会感到迷惑,我们日本人是绝不会对上司或客人使用“あなた”这个词的。说起来,一般都对在自己地位之下的人使用。
しかし昔はこの「あなた」は上の人などにも広く使われていたらしい。事実辞書には「目上や同輩である相手を敬って指す言葉」とある。しかし時代とともに言葉の意味もどんどん変化しており、辞書の新版には「現今は敬意の度合いが減じている」と説明が加えられている。現在では奥さんが旦那さんを呼ぶときぐらいしか使われていないのでは・・・。やはり「あなた=You」ではないのであり、日本語教師の役割も大切である。
但是貌似很早之前,“あなた”也对地位之上的人广泛使用。在事实字典上,写着“指代长辈或同辈的对方的尊称”。但是随着时光流转,词语的含义也在逐渐变化。新版字典上也添加了说明,“现在表达敬意的程度减少了”。现在这个词估计只在妻子称呼丈夫的时候使用吧……。“あなた=You”是不成立的,请日语老师们告诉学生这一点。
しかし弔辞には依然としてこの「あなた」が使われている。明かに上位者である故人に対しても堂々と用いており、これは故人になったことによりいろいろな人間関係のしがらみがなくなり本来の目上の人を指す姿が顔を出してくるのであろうか。
但在追悼词中依然使用着“あなた”,可以对已故的长者光明正大地使用。这是因为故人已逝,各种人情纠葛已经不存在,露出了人的本来面目吧。
また表題の「様」と「殿」であるが、どう使い分けるのか?
另外还有标题中的“様”和“殿”,该怎么区别使用呢?
どちらが上なのか?ビジネスレターを書く場合の質問の定番であり、確かに日本人にとってもややこしい。昔は「殿」のほうがはるかに上位であったのは事実であろうが、現代ではむしろその関係は逆転している。「殿」のほうが低いと感じる人が多いと言われており、実際離れて住んでいる息子に手紙を出す場合息子の名前に 「様」よりは「殿」を使いたいと感じる父親が多いとのこと。明らかに「殿」の敬意がどんどん低くなっている。そして昨今では下の人にもほとんど使われなくなってきている。
两个词哪个更尊敬?这是写商务书信时必定会被问到的问题,对日本人来说也感到很麻烦。过去,“殿”的等级要高很多,但到了现代,两个词的地位发生了逆转,很多人感到“殿”的地位更低一些。许多父亲在给分开住的儿子写信时,会在儿子的姓名后加上“殿”,而不是“様”。很明显,“殿”所表达的尊敬的含义越来越低。所以近来,身份低的人也不会对身份高的人使用 “殿” 了。
ただ表彰状の場合や〇〇部長殿などには今でも堂々と使われているのだが。
只是在表彰奖状上,“〇〇部長殿”还在被堂堂正正使用着。
こんな説明をしたあと、ある生徒さんが、分かりました。「様」のほうが敬意が高くよく使われるんですね。では「貴様」のほうが「貴殿」よりも敬意が高いんですかの質問である。
在做了这番解释后,那个学生明白了。又问到,“様”表达的敬意比较高是吧。那么“貴様”(你这个混蛋)也比“貴殿”(阁下)的敬意要高吗?
ホント嫌な生徒である。
真是讨厌的学生啊。(笑)