「ここ、そこ、あそこ」の不思議
日本語教育において「これはなんですか」などの「これ、それ、あれ、どれ」は初級のかなり早い時期に教えている。いわゆる「こそあど」の導入である。「こ」は話し手に近いもの、「そ」は聞き手に近いもの、「あ」は二人から遠いものと先ずは距離を十分意識して教えなければならない。
在日语教育中,类似于“これはなんですか(这是什么)”中出现的“これ(这个)、それ(那个)、あれ(那个)、どれ(哪个)”等会在初级日语的较早阶段教给学生,也就是所谓的“こそあど”引入教学。 “こ”是指离说话人较近的事物,“そ”是指离听话人较近的,而“あ”则是指离双方都比较远的事物,老师在教授的过程中必须像这样先重视这些距离概念。
最初に「これ、それ、あれ」や「この本、その本、あの本」である。そして次に場所を表す「ここ、そこ、あそこ」を教える。ここで中級レベルの生徒からこんな質問を受けた。なぜ「あこ」ではなく「あそこ」ですか、である。最初は質問の意味がよく分からなかったのだが・・・
我最先教给学生的是“これ、それ、あれ”及“この本(这本书)、その本(那本书)、あの本(那本书)”,然后是表示场所的“ここ(这儿)、そこ(那儿)、あそこ(那儿)”。而此时中级水平的学生问了我这样一个问题:“为什么是‘あそこ’而不是‘あこ’呢?”刚开始我连他的问题是什么意思都没搞清楚……
確かに「これ、それ、あれ」であり、「この、その、あの」である。だから場所も「ここ、そこ、あこ」ならとても簡単で分かりやすい。でもどうして「あこ」ではなく「あそこ」になるのか・・・、生徒とすればややこしい。そんなこと我々日本人は考えたこともないが、でも確かにそういわれてみれば・・・なるほどと唸ってしまった。
“これ、それ、あれ”、“この、その、あの”,按照以上这些表达习惯来看,表示场所的说法确实应该是“ここ、そこ、あこ”,这样才更简单易懂。但事实上为什么是“あそこ”而不是“あこ”呢……这点对于学生来说比较难理解,而我们日本人更是连想都没想过,经他这么一说还真觉得有点道理。
実際「あこ」を方言として使っているところもあるようだが、日本語教育ではやはり「あそこ」と教えなければならない。生徒にはそんなことイチイチ気にせず覚えなさいと叱ったのだが・・・。するとさすが中級レベルの生徒である。先生、なぜ「あそちら」と言わないんですか、とても不思議ですね、である。なおさら分かりにくい質問であるが・・・。
事实上好像确实有些地方将“あこ”作为方言在使用,但是在日语教育中还是不得不教学生用“あそこ”。当初我还教训大家说不要过于在意这些东西,只要记住就行了……话说果然是中级水平的学生啊,问出了更难的问题——“老师为什么不是‘あそちら’(而是‘あちら’)呢,太不可思议了啊”。
「ここ、そこ、あそこ」の丁寧な表現を勉強した本人は丁寧に言う場合、終わりの「こ」が「ちら」になると一生懸命覚えたのである。「ここ」は「こちら」、「そこ」は「そちら」、そして「あそこ」は「あそちら」であると信じて疑わずである。だからなぜ「あそちら」ではなく「あちら」になるのか納得できないのである。
据说那个同学在学习了“ここ、そこ、あそこ”的礼貌说法后,用这样的方法去拼命记忆——把词尾的“こ”变成“ちら”。因此他深信“ここ”是“こちら”,“そこ”是“そちら”,“あそこ”是“あそちら”,事实上却是“あちら”而不是“あそちら”,因此他对这点表示无法理解。
そんなことどうでもいいことだが、うーん、確かにそう言われてみれば「あそちら」のほうが道理である。今度はあまり叱れず、小声で「あそちら」は長くて言いにくいから「あちら」と覚えなさい、である。でももし「あ」を示す場所の言い方が「ここ」や「そこ」と同じように「あそこ」ではなく「あこ」であれば、丁寧な言い方は「あちら」なのだからつじつまが合う。日本語教師としてはとても楽なのだが、なぜ「あこ」ではなく「あそこ」というのか、確かに不思議である。
虽然这疑问没什么意义,但是被他这么一说我也确实觉得“あそちら”这种表达比较合理。这回我没怎么训他了,而是小声说“あそちら”太长不好说所以你记住“あちら”就行了。但是,如果像“ここ”“そこ”这样表示场所的说法是“あこ”而不是“あそこ”的话,那礼貌说法是“あちら”便顺理成章了,日语老师教起来也比较轻松。为什么是“あそこ”而不是“あこ”呢,确实挺奇怪。
そしてこの「こそあ」に関しては距離以外にもう一つ大事なことがある。例えばこんな間違い表現をする。「先生、リルエットという町があります。あそこはとてもいいところですよ」である。生徒の大部分は遠いから「あそこ」になってしまう。でも先生がリルエットという町を知っているか、知らないかの違いを教えなければならない。知らなければ「そ」を使って「そこはいいところです」であり、知っていれば「あ」を使って「あそこはいいところですね」である。
另外,关于这个“こそあ”,除了距离之外还有一个很重要的点。举个例子,学生会犯这样的错误,“先生、リルエットという町があります。あそこはとてもいいところですよ(老师,有个城市叫做洛厄特,那是个很好玩的地方哦)”,大部分学生都会以“远”为理由选用“あそこ”这个词,而老师就必须告诉学生,老师对洛厄特这个城市知道与否影响着词语的选用。要是不知道就得用“そ”,即“そこはいいところです”,反之则用“あ”,即“あそこはいいところですね”。
すなわち「あそこ」は両方が知っていなければダメである。「日本語はどこが難しいですか」という質問に「やはりあそこが一番難しいですよ」。こんな会話ができるようになったらもうしめたものである。
也就是说,使用“あそこ”的前提是双方必须都知道说话人所指的事物。问“日本語はどこが難しいですか(日语难在哪)”,答曰“やはりあそこが一番難しいですよ(还是那儿最难啊)”。如果大家能说出这样的对话了,那真是太好不过了。